言葉をはきだす機械

ことばをはきだすきかい。コトバヲハキダスキカイ。

音たちへ

 かちりかちりと音がする。

 お酒を大量に飲んだせいで布団に突っ伏している耳にひっそりとささやいてくるやさしい音。おそらくコップの中で氷たちがゆるやかに、ふざけあうようにぶつかり合う音だろう。痛飲した自分をからっかって声をかけてくれているのだろうか。自分の意志とは全く無関係にぐるぐる回る世界の中で、少しだけうれしくなる。暗転。

 

 さたささたさと音がする。

 気がつけば外は雨のようだ。ほとんど霧のような降りかたらしく、葉っぱや花に当たった雨たちが上記のような会話をしている。僕のことには気づいているのだろうか。もしかしたら認知はしているけれど、全く気にも留めていないのかもしれない。雨たちが僕とは無関係に世界は回り、進んでいくことを教えてくれている。ふたたび少しだけうれしくなって、暗転。

 

 こそりこそりと音がする。

 ああ、これは知っている。自分の布団がこすれあってしゃべる時の音だ。この子たちはいつでも安心の化身のような存在で、とりあえず毎日は大丈夫だと、もうキッズじゃないけれど君もオールライトだと、頼りない主人に言い聞かせてくれる。ありがとう、そう言ってくれると、うれしい。

 ゆっくりと今日最後の、暗転。

 

 意外とすべてはやさしいのだと教えてくれるいろいろな音たちへ。